2014年5月6日火曜日

熊谷晋一郎先生

 「ASD者の身体性に基づく社会と言語のデザインー当事者研究という取り組み」

【要旨】
道具・社会・言語といった人工環境のデザインはすべての個体に合ったものではない。例えば身体障害者は既存の物理的環境のデザインに合わず、ASD者の身体は社会のデザインに合わない。この問題を解決するには、デザインに身体を適応させる以外に、少数派の身体にデザインを適合させる方法がある。ASDにおいて後者を実現するには、デザインと身体の齟齬(disability)の次元と、デザイン以前の身体的特徴(impairment)の次元を区別したうえで、1) ASDにおけるimpairment、2) ASDに合った社会や言語のデザイン、の二つを探究する必要がある。本講演では、ASD概念がimpairmentとdisabilityの区別をあいまいにしていることを批判的に検討したのちに、1)や2)の探求において当事者研究という方法が有効であることを提案する。また当事者研究の中から生まれたASDのimpairmentに関する仮説とその実証実験、当事者研究の中から生まれたASDに合った相互作用様式である「いいっぱなし、ききっぱなし」の会話分析について紹介する。

0 件のコメント:

コメントを投稿